ハイボール プーケットでゴルフレッスン by カフェ王
カフェ王
タイ南部プーケット島在住。ゴルフを始め、なんとか上手くなりたいと思っていたら運よく日本人のプロゴルファー馬場さんに出会い現在修行中。プーナカゴルフコースのドライビングレンジに頻繁に出没。初心者ばりばり、日々の成果をブログ『ハイボール タイ・プーケット島でゴルフレッスン』に更新中。
第2話『千里の道も一歩から』
「わぁ~、なんでまっすぐ飛ばないんだぁ~」って叫びたくなる時が、ゴルファーなら一度はあると思う。いや、一度ならず、二度、サンドウェッジっておやじギャグを言ってる場合か!
私はこの「まっすぐ飛ばない地獄」におよそ1年以上も苦しんだ。意味がわからない。だって、動いてるボールじゃなくて、止まっているボール。どこにも逃げていかないボールをまっすぐに打つことができないのだ。 この壁にぶち当たり、一度は本当にゴルフをやめようと思ったが、なんとか踏みとどまった。おそらくこういう分岐点でやめる人と思いとどまる人に分かれるんだなと思う。
ところで、ゴルファーの皆さん、あるいは、ゴルフを一度もやったことのない皆さん、貴方はゴルフボールを思いっきり投げたことがあるだろうか。 日々の練習であまりにもまっすぐに飛ばない期間が長かった私は練習するのにも嫌気がさして、一度ゴルフボールを思いっきり投げてみたことがある。
夕日に向かって投げれば、青春ドラマだが、ここはプーケット。だから、燃え盛るギラギラの太陽に向かって投げてみた。 ゴルフクラブでまっすぐ飛ばないなら、投げたほうがましだと思ったからだ。単細胞極まりない。すると驚いたことに30ヤードくらいしか投げることができなかった。思いっきり投げたのに、たったのそれだけって感じで拍子抜けした。それでついつい投げやりになっていた気持ちにもう一度喝を入れ直して、真面目な気持ちで練習を再開したことを覚えている。
初心者なりに思うことはゴルフとは正確な距離と正確な方向を様々な場面で打つことができれば、必ずスコアがあがるということ。ゴルフをやったことがある人はきっと心底感じることだが、ゴルフをやったことがない人からするとそんなの当たり前だよねって思うはずである。 そう、当たり前のことができないので、たくさんの人がゴルフの魅力にはまっていく。
で、馬場さんに教わり始めた時、てっきりそういうことを教えてくれるのかなと思っていたら、全然的外れだった。 多分、教える順序というものがあり、個々の生徒さんの癖を見抜き教えていると思うのだが、私の場合は、距離や方向を目指す以前の問題だったようだ。
初めに教わったことはスタンスとアドレス。どのように立ち、どのように構えるか。構えるだけだから、これは簡単と思いきや、初心者の私はどうしても力んでしまう。力を抜いてって言われれば言われるほど、なかなか簡単に力を抜くことができない。力が入っているということは飛ばしたいという気持ちが強すぎるということらしい。
力で飛ばそうと思っている間はだめなんだよねってまるで禅問答のようだ。 それでも馬場さんは繰り返し繰り返し構え方を教えてくれた。 まず両足のスタンス。両足・両膝の向き。ボールの位置。上半身の状態。 ゴルフクラブの持ち方と持つ場所。クラブヘッドの向きと角度などなど。 数え上げればきりがない。 ひとつひとつを言われたように再現しているうちに力が入ってしまう。 このアドレスが完成して、そして力を一旦抜く。これが重要。
そして次のステップはテイクバック。 どのようにクラブを振りあげるのかということである。 振りあげることにばかり集中していると腕だけが振りあがってしまう。 それじゃあ、腕だけで持ちあげているだけだから身体の回転で振りあげてごらん と言われると、今度はスウェーしてしまう。 スウェーせずに、右の膝を固定し、股下から右の骨盤(股関節周辺)にかけて、 自分のズボンにラインがしっかりと出るようにすること、これがポイントだ。 ※スウェー・・・テイクバック時に右膝が右側に移動し、 下半身が固定されずにずれてしまい右側の腰が伸びあがること。
私の性格は頭で理解しないとどうしても前に進めないので、 その都度馬場さんに質問することになる。馬場さんはいつも丁寧に答えてくれる。 「でも、どうしてスウェーするとダメなんですか?」 と聞いてみた。 すると「捻転なんだよね」の一言。 出たぞ、ゴルフ用語。
捻転? 単純にゴルフクラブを自分の身体の幹を中心にして勢いよく回転させれば ボールは飛ぶんでしょって、多くの人は勘違いしているはず。 私もまったくそう思っていた。 単純な身体の回転で打つ球は意外にも軽くてそんなに飛距離も出ない。 捻転を利用すると飛距離が20~30ヤードくらいは簡単に変わってきてしまう。 イメージ的にはバネを利用したバッティングセンターの機械のようなもの。 力を貯めて貯めて貯めて、そして最後に一気に力を放出する。そんな感じだ。
それがスウェーしてしまうと力が逃げてしまい、貯めることができなくなり、 飛距離が出なくなってしまう。 伸びきったバネにはボールを飛ばす力がないということだ。 そうか、捻転か、ちょっと右膝と腰をぴたっと動かさずに我慢すればいい話で そんなに難しいことはない。そして打ってみると少し飛ぶようになった。 はぁ~、やっとできた。 そう思っていたら、なんと次のステップがあった。
スタンス、アドレス、テイクバックときて、 もう頭の中はいっぱいいっぱいなんですけどぉ~と言っても、仕方がない。 「次のステップお願いします。次はインパクトですか?馬場さん?」 「いや、まだ早い。ダウンスイングだ。」 「何?まだあったのか!なかなかボールまでたどり着けないぞ。」
次のステップとは振りあげれば今度は玉を打つだけだと思うのだが、 実は振りあげてから玉を打つまでのほんの一瞬の間にすることがあったのだ。 それが体重移動を含めたダウンスイング。 捻転は体重移動するための下準備のようなものだった。 捻転ができていないともちろんダウンスイングも上手くいかない。 ゴルフにはまった人ならテレビを見ていても、 プロのゴルファーが瞬間的に体重移動していることが目につくはず。 でも、やったことがない人には早すぎてわからない。
よっしゃ、やってやろうじゃないですかって始めた体重移動を習得するのに、 まさか3か月間もかかるとはその時は思ってもいなかったのだが。 それぞれのゴルファーによって、自分が到達するべき山の頂きの風景は違う。 600mの山にゆっくり登り、楽しむ人もいれば、 エベレスト級の超難関の山を酸素ボンベなしで登ろうとする人もいる。
そういう意味でゴルフはゴルファーの数だけ楽しみ方があると思う。 ゴルフの起源はなんと15世紀にまで遡るそうだが、なんとも奥深いスポーツだ。 馬場さんに教わっているとなんとなくだが、 ゆっくりゆっくりと自分の描いた山の頂きに近づいているような気がする。 諦めずに山頂を目指せば、いつか辿り着くのではないだろうかという希望が 沸々と湧いてくる。
それってなんとなく人生にも繋がっているような・・・。 「千里の道も一歩から」 そういう気持ちにさせてくれる馬場さんに出会えたことに感謝し、 私にとってはとてもラッキーなことだと思う今日この頃である。
第1話 「克己復礼」
ゴルフをするきっかけとはなんだろうか。それは皆それぞれいろいろだと思うのだが、私の場合は、ちょっと普通とは違う(と思っている)。2年前、ある事情で仕事を辞めてしまった。その後、新しい仕事を始めようと思い、その勉強のためにひたすら本を読みまくった。
気が付いたら、視力の低下とともに、半年が経過していた。そんな浦島太郎でもないだろうに気が付いたら半年が経過していたなんて、言い過ぎだと思うかもしれないが、体重が落ちるほど、勉強したのは、学生だったころ以来である。そして半年後、気がついたことは体力が落ちまくっていたということ。歩くのが精いっぱいだったのである。肌の色は日本に居る時よりも白くなっていた。こんな暑いところなのに、一歩も外出しなかったからである。
まだ40代でこの体力の無さはなんなんだと自問自答しているとき、たまたま家の近くに新しいゴルフ練習場兼ゴルフコースが誕生した。なんとなく、新しいことを始めたかったということ、それからたまには外出するのもいいかなと思ったこと、そして運動しなきゃ、歩けなくなるかもと不安を感じたこと。
それで思い切って、プーナカというゴルフ場に行ってみた。そこにはオリバーというイギリス人がティーチングプロとしてゴルフを教えていた。最初の10時間はこのオリバーに基礎を教わり、それから自己練習をしていたが、昨年の6月頃から日本人プロの馬場さんに教えてもらうことになった。
ゴルフをやっている人でゴルフを好きな人がどれくらいいるのかは分からない。それはゴルフをやっている人はみんなゴルフが好きでしょうと思うだろうが、私はそうは思っていない。きっとサラリーマンの人たちなんかは付き合いでゴルフをやらされている人たちも少なからずいるのではないだろうか。
私がオリバーに教わった後、正直、ゴルフの楽しみがあんまりわからなかった。友達と一緒に下手ながらもコースに回り、ビールを飲みながら、炎天下のプーケットでゴルフをすればそれはそれで楽しい。しかし、ゴルフ自体の楽しみかどうかは別物だと思う。
馬場さんに教わった時、私は確かにそれを感じた。 教わってから、3か月くらい経ったある日の夜。練習にでかけてボールを打ってみたら、軽く打ったにも関わらず驚くほどボールが遠くに飛んで行った。この日、この瞬間。私は自分の人生で初めて、ゴルフは面白いと感じたのである。 なんだ結構、ゴルフって面白いし、簡単じゃないかと思ったのがきっとゴルフの神様のいたずら。次の日から練習に行ってみても、二度とそのスイングをすることができなかった。
そして、昨年の12月頃からもう一度びっちり練習しようと思い立ち、馬場さんに徹底的に教えてもらうことになった。 そう、あの日の感触を取り戻すために。
「球を打っても 球を打っても 我がゴルフ上手くならず じっと手を見る」 とまるで石川啄木のように豆だらけになった手を見るわけだが、見ていても何も始まらない。己に克つという精神でゴルフに臨みたいと思う今日この頃である。 (2011年2月号からプーケットウォーク・メールマガジンで連載スタート)



